| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-143 (Poster presentation)

孤島におけるオガサワラヤモリの訪花行動

*村上勇樹(首都大・生命), 辻村美鶴(首都大・生命), 加藤英寿(首都大・生命), 林文男(首都大・生命)

一般的に動物媒の植物種は、その送粉を昆虫や鳥類に頼るが、爬虫類による訪花も僅かではあるが報告されている。爬虫類による訪花はそのほとんどが島嶼で見られる現象である。しかし、爬虫類が花粉媒介を担っているという決定的な証拠は未だなく、花を訪れる頻度や目的も明確にされていない。発表者らは、小笠原諸島の聟島、兄島、父島、および大東諸島の北大東島、南大東島にて、最多5種の植物種(アカテツ、ヒメフトモモ、ムニンネズミモチ、クサトベラ、モンパノキ)を対象に、3~5台のカメラを用いて、2分おきの24時間、および1分おきの夜間のみ12時間のインターバル定点写真撮影を5月から9月にかけて数日間ずつ連続で行い、爬虫類の訪花頻度を調査した。その結果、いずれの島、いずれの植物種においても、単為生殖を行う爬虫類として知られるオガサワラヤモリ(Lepidodactylus lugubris)の高い頻度の訪花が確認された。そこでは、花に来る昆虫の捕食だけでなく、花粉や花蜜を舐めるという行動も観察された。さらに、オガサワラヤモリは小笠原諸島で2クローン、大東諸島で12クローンが報告されているが、一部のクローンのみでそのような行動が見られた。これらのクローンでは、昆虫類の訪花が盛んな時間帯とオガサワラヤモリの訪れる時間帯の間に有意な相関は見られなかった。このことから、オガサワラヤモリは花に来る昆虫の捕食だけを目的としているのではなく、花粉や花蜜に誘引されている可能性が高い。また一部の植物種では、オガサワラヤモリが頻繁に花を訪れていること、他の訪花者が少ないことから、このヤモリが送粉者である可能性が考えられる。


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