| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-145 (Poster presentation)

同所的に生育する近縁植物2種の生殖隔離と形質分化 

*木村真美子, 堂囿いくみ(学芸大・院・環境科学)

近縁植物2種が同所的に分布し,2種間に不適応な雑種が形成されることがある。この時,同所的集団では交雑が起こりにくい形質が分化し,単独集団よりも形質差が大きくなり,形質置換が起こる可能性がある。

カメバヒキオコシとセキヤノアキチョウジ(シソ科)が同所的に生育している場所では,共通の送粉者としてトラマルハナバチが報告されている。本研究では,交雑の可能性と生殖隔離の有無,繁殖干渉によって形質置換が生じているか明らかにすることを目的とした。

東京都奥多摩地域にて,(1)マルハナバチの訪花頻度の測定をしたところ,同所的集団(三頭山・神戸岩)ではトラマルハナバチが2種に訪花していた。(2)カメバヒキオコシを胚珠親として人工受粉実験をおこなった。異種交配は同種交配より種子生産が低くなり,雑種種子の発芽率は低かった。セキヤノアキチョウジを胚珠親とした時,異種交配の果実はできなかった。(3)自然受粉の種子生産について,2種ともに同所的集団では単独集団より低くなったことから,2種間に繁殖干渉があると考えられる。(4)形質置換について,花筒長は同所的集団と単独集団間で差はなかった。開花フェノロジーは,神戸岩では開花ピークがずれていたが,三頭山ではほぼ同じであった。神戸岩において,2種の開花期が重なっていた時に咲いていた個体と,開花期がずれている時に咲いていた個体で,種子生産を比較したところ,開花期がずれている時に咲いていた個体の方が高かった。

カメバヒキオコシとセキヤノアキチョウジの間ではトラマルハナバチの訪花により交雑が起こる可能性があり,雑種種子はできるが不適応であった。同所的集団の三頭山では形質置換は生じていないが,神戸岩では繁殖干渉によって開花フェノロジーの形質置換が生じると考えられる。


日本生態学会