| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-162 (Poster presentation)

ミスミソウにおける訪昆虫の色彩認識能力と花色多型の関係

*亀岡慎一郎 (京大院・人環), 崎尾均(新潟大・農), 阿部晴恵(新潟大・農), 村井良徳(科博・植物), 大橋一晴(筑波大・生命環境), 瀬戸口浩彰(京大院・人環)

表現型や遺伝子型の多型が集団の中に維持されるメカニズムは、進化生物学における大きな謎の一つである。キンポウゲ科のミスミソウの花は集団内に色彩多型を有し、白、赤、青を基本として、連続的に変化する花色を有する。本研究では、この連続的な花色が、「訪花昆虫の色覚」と「成分」の観点からいくつのタイプに分かれるのか?という課題に取り組んだ。「訪花昆虫の目から見た場合のミスミソウの花色」に関しては、ミスミソウにおいてはコマルハナバチの訪花が確認されたため、マルハナバチをベースにしたカラーヘキサゴンの解析を行った。結果、訪花昆虫はヒトと同じく、連続的な異なる色に識別していることが示唆された。また、HPLCで「花色の成分」を分析した結果、花色は3つのタイプ(アントシアニン無し(N)、シアニジン(C)、シアニジン+デルフィニジン(C+D))に分かれることが示された。引き続き、これら3タイプの花色色素が、マルハナバチの認識能力に一致するかを検証した。アントシアニン無しのNタイプ(白色)と、アントシアニンを含むC(赤色)、C+Dタイプ(青色)は異なる色と識別されるが(D>0.09)、CとC+Dタイプ間は必ずしも異なる色として識別されなかった。以上の結果は、花色多型をもつミスミソウの群落は、マルハナバチには異なる花色が混生しているように映る可能性を示唆している。今後は訪花昆虫の実際の行動を観察すると共に、色素の濃淡やその他のフラボノイドの有無が関与している可能性について検討したい。


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