| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-181 (Poster presentation)

環境DNAメタバーコーディングを用いた淀川の魚類相モニタリング

*稲波璃香(神戸大・発達), 山本義彦, 近藤美麻, 上原一彦(大阪環農水研・水生セ), 佐藤行人(東北大・ToMMo), 宮正樹(千葉県博), 山本哲史, 源利文(神戸大・発達)

生物多様性の保全は世界規模の課題であり、それは陸上のみでなく水域にもおよぶ。課題解決のためには現時点での生物相の情報が必要であり、調査法の確立が求められる。本研究では、環境モニタリング手法として有効な環境DNAメタバーコーディング手法を用いて推定された生息魚種と、地引網による捕獲調査魚種結果とを比較することで同手法の河川における有効性を検証した。メタバーコーディングの魚類用ユニバーサルプライマーとしては、12SrRNA領域をターゲットにしたMiFishを用いた。

ワンド群59地点および本流・止水域29地点を含む淀川の88地点の採水サンプルを用いて、同時期・同地点で行われた捕獲魚種結果と比較すると、ワンド群の捕獲調査結果30種に対しメタバーコーディング法では38種、本流域では21種に対して37種、全域では32種に対して47種の淡水魚種を検出した。捕獲魚種数を100%とした場合の検出魚種はワンド域で50%、本流・止水域で67%、全域で55%であり、また検出種数から算出した両調査の類似度Jaccard指数はワンド域で0.39、本流・止水域で0.36、全域で0.38であった。メタバーコーディング手法による検出種にはイタセンパラやホンモロコなど環境省および大阪府のレッドリスト記載種もあり、希少種の検出も可能となったことが類似度の差の要因のひとつとして考えられる。またオオクチバスやブルーギルなど同水系に多く生息する外来魚種の検出もあり、淡水域での環境モニタリング手法としての有効性が確認された。


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