| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-183 (Poster presentation)

茅葺屋根に集団営巣するサイジョウハムシドロバチの遺伝構造

*佐藤豪士(茨大院・理),諸岡歩希(茨大・理),小島純一(茨大・理)

サイジョウハムシドロバチSymmorphus apiciornatusは借坑型ドロバチであり、茅葺屋根に普通に巣を作ることが知られ、時には数百個体が一戸に集団営巣することも珍しくない。自然の中には茅葺屋根のような既存坑が密集している環境は存在せず、茨城県常陸大宮市山方宿及び大子町では、局所的にサイジョウハムシドロバチの集団が形成されている。そのような集団間で個体の移動が一定度ある場合、各集団の遺伝的多様性は保たれるが、分断化された集団では、遺伝的浮動などによって遺伝的多様性は低くなる。本調査地では約50年前から茅葺屋根が急速に減少しており、集団の分断化が急速に起こっていると考えられる。本研究の目的は4つのマイクロサテライト遺伝子座を用いて、茨城県常陸大宮市山方宿及び大子町の茅葺屋根に集団営巣するサイジョウハムシドロバチ集団の遺伝構造を解析することで、急速な生息地の減少の個体群の遺伝構造に対する影響を明らかにすることである。採集は11地点で行い、1地点が常陸大宮市山方宿に位置し、それ以外の地点はすべて茨城県大子町に位置した。2地点間でのFstと遺伝子型の違いは多くの組み合わせで有意に分化が起きていることを示した。Isolation By Distance(IBD 距離による隔離)の解析では、すべての地点を含めるとIBDが検出されたが、常陸大宮市山方宿の地点を除くとIBDは検出されなかった。Neiの遺伝的距離を用いたクラスタリングでも常陸大宮市山方宿の地点は遺伝距離が離れていたことから、それ以外の地点から著しく分化していることが示された。


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