| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-186 (Poster presentation)

長野県佐久市の水田地域における水生昆虫群集と立地環境及び農法との関係

*大澤崇季(信大院・農研),大窪久美子(信大・学術院農),渡辺太一(信大院・総合工)

水生昆虫は、昆虫の生活過程の中で、その全部あるいは一部を水中で過ごす昆虫類をさす。環境省第4次レッドリストでは、ナミゲンゴロウが準絶滅危惧種から絶滅危惧Ⅱ類に格上げされるまでに減少している。本研究では、長野県佐久市の水田地域を対象とし、水生昆虫群集と立地環境条件および農法との関係を明らかにし、保全策について検討することを目的とした。長野県佐久市において8地区104筆の水田を調査対象地区として選定し、手網を用いて水生昆虫捕獲調査を行った。立地環境条件を調べるため現地踏査とGoogleMapを用いた面積算出を行い、水田の管理状況に関する聞き取り調査を行った。さらに、地区内には有機農法、慣行農法、減農薬農法が混在している。調査の結果、4690個体が捕獲され、種・分類群合計は45であった。RDB掲載種は鞘翅目から3種、半翅目から2種、トンボ目から2種の合計7種を捕獲した。出現種・分類群は平地部である本新町地区で18、山間部に近い町上地区で40であった。さらに、RDB記載種は町上地区で7種、本新町地区で3種出現した。さらにTWINSPAN解析を行ったところ、地区は東から順に3グループに分類され、種群は4グループに分類された。それぞれのグループに特徴的に出現している種が明らかとなり地区によって出現個体数が偏る種も確認する事ができた。また、代表地区を抽出し農法別・種別に出現個体数グラフを作成した所、個体数に偏りを見せる種が明らかとなった。以上から、水生昆虫群集は周辺環境により影響を受け、さらに、よりスケールの小さい農法という単位でも変化することが確認された。水生昆虫群集を保全するにはより様々な環境を持った水田地域と、有機水田があることなど、複雑な要因があることが重要であることがわかった。


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