| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-204 (Poster presentation)

分断化景観における鳥類多様性の季節変化:生息地ネットワークと河畔林に注目して

*藪原佑樹(北大院農), 赤坂卓美(帯広畜産大), 山浦悠一(森林総研), 山中聡(北大院農), 中村太士(北大院農)

生息地間の連結性の確保は、分断化景観で生物を保全する際の重要な戦略である。平地の残存森林の多くを占める河畔林では、平地林との生物相の違いが注目されてきたが、河畔林を含む森林ネットワークと生物の分布パターンの関係については詳しく検証されていない。温帯域の森林では、森林生産性や鳥類の行動パターンに明瞭な季節変化がみられ、鳥類の生息地利用に林相や景観構造が及ぼす影響は季節に応じて変化すると考えられる。特に、鳥類の移動性が高くなる分散期や森林生産性が総じて低い越冬期は、林相の違いよりも、連結性など景観構造の影響がより大きくなると予想される。そこで北海道十勝平野に点在する森林を対象に、様々な季節における森林性鳥類の分布規定要因を解明し、河畔林を含む森林ネットワークの保全上の重要性について検討した。

森林性鳥類の分布を、鳥類の繁殖期(5-7月)と分散期(8-9月)、越冬期(1-2月)に調査した。一般化線形モデルを用いて、鳥類の種数と個体数に対するパッチ面積と連結性、森林タイプの相対的重要度を季節ごとに明らかにした。なお、各森林パッチが有する連結性の強度は、ある距離のパッチ間の移動を仮定したネットワークを介して到達可能な森林の総面積と定義した。解析の結果、森林性鳥類の分布を規定する要因は季節に応じて異なる傾向を示した。森林のスペシャリスト種は繁殖期に河畔林、越冬期に針葉樹林で個体数が多く、分散期は連結性が高い森林で個体数が多く出現した。この結果は、温帯の分断化景観における森林性鳥類の保全では、河畔林を含む多様な林相の森林を維持した上で、森林パッチ間の連結性を高めて頑健な森林ネットワークを構築する必要があることを示唆している。


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