| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-213 (Poster presentation)

河川源流域における底生動物群集の流程による変化と河川環境

*井上光也,山中萌(高知大・理),加藤元海(高知大・黒潮)

高知県内を流れる仁淀川支流の小川川と四万十川支流の黒尊川の2河川を対象に、源流点から流程に沿って河川環境と底生動物群集の調査を行なった。調査地点は各河川でそれぞれ源流点を含む6地点の合計12地点、2014年から2015年の毎年各季節に1回ずつの合計8回行なった。調査地点の標高は25–1000 mの範囲であった。流量は小川川源流点の0.7 L/sから小川川最下流地点の3244 L/sの範囲であった。標高、水温、流量、底生藻類を環境条件として、環境条件間の関係および底生動物群集と環境条件との関係について単回帰分析により検討を行なった。単回帰分析の結果、底生藻類密度は流量とともに増加した。サワガニとテナガエビを除く底生動物群集の生物量および個体数は、水温が低く、底生藻類密度が高いほど多かった。分類群ごとに分けた場合、流量とともに藻類食性のカゲロウや造網性トビケラの個体数が増加した。水生昆虫の多くが春に羽化するため水温の低い冬から春にかけては底生動物の生物量と個体数が多かったのに対し、水温が高い夏から秋は台風など洪水によって底生動物が少なかったためであろう。底生動物が底生藻類密度とともに増えたのは、藻類を主な餌とするカゲロウや造網性トビケラのヒゲナガカワトビケラが増えたことが原因であると考えられる。底生藻類密度と流量には正の相関があることから、流下物を主な餌とする造網性トビケラのシマトビケラが底生藻類密度とともに増えたと考えられる。日本の河川上流域においては、底生動物群集を生物量において優占するのは造網性のヒゲナガカワトビケラやシマトビケラであり、個体数において優占するのはカゲロウ類であることから、底生動物群集の生物量と個体数は底生藻類密度とともに増加したのであろう。


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