| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-224 (Poster presentation)

札幌市における雪堆積場からの融雪水が河川生態系に与える影響

*川尻啓太(北大・農),末吉正尚(土木研),石山信雄(北大・農),太田民久(地球研),福澤加里部(北大・FSC),中村太士(北大・農)

札幌市のような都市では、積雪が交通の妨げになるため、除雪された雪は、河川近くの雪堆積場に集められ処理される。この雪には道路上に散布された凍結防止剤(塩化物)、大気汚染物質などの化学物質や砂や粉塵が多く含まれている。これらの雪が融雪期にとけだし、河川へと流出すると、河川水や水生生物にインパクトを与えることが予測される。しかし、実際に堆積場の融雪水が河川生態系に与える影響を評価した研究は少ない。本研究では、堆積場から流出した融雪水が河川水質と水生生物群集に与える影響を解明することを目的とした。また、融雪水は春に長期的に流出することから、融雪の時期によって影響が変化する可能性があるため、その影響の時期的変化も同時に明らかにした。

調査は札幌市内にある7か所の堆積場の近隣河川で行った。各調査河川の堆積場の融雪水が流入する箇所の上流と下流にそれぞれ調査区を設置し、各調査区で3月初旬から6月中旬にかけて、水質調査(イオン濃度など)を9回、付着藻類のクロロフィルa量と水生昆虫調査を3回行った。

解析の結果、堆積場の下流区において、融雪初期にあたる3月にのみ、上流区に比べて凍結防止剤由来と考えられるナトリウムイオンと塩化物イオン濃度の上昇が見られた。この結果から、堆積場からの融雪水が河川水のイオン濃度変化を起こしうることが示唆された。ただし、この変化は一時的なもので融雪が進むにつれて差は減少した。生物の応答としては、クロロフィルa量と水生昆虫の個体数ともに堆積場による影響は検出されなかった。これは、本調査対象地においては、水質の変化が一時的なものでかつ生物群集に影響を与えるほど大きくなかったためと考えられる。


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