| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-236 (Poster presentation)

回遊性ハゼ科魚類の淡水進出に伴う平行的種分化:近似ベイズ法を用いた検証

*山﨑曜(京大院理),武島弘彦(地球研),鹿野雄一(九大決断),大迫尚晴(宜野湾市),鈴木寿之(川西緑台高),西田睦(琉球大),渡辺勝敏(京大院理)

ある状況下における種分化の生起の予測は,進化生態学における重要課題である.これまでに種分化確率が生息場所の面積と正の相関を示すパターンが知られ,その成立機構として,地理的な隔離や適応進化といった集団間の遺伝子流動の制限に繋がる小進化過程が,面積に依存して生じた可能性が考えられている.しかし先行研究では様々な過程の下で起きた種分化を込みにして面積との関係が調べられており,種分化に至るどのような小進化過程が面積と関係したのかについて検討した実証研究は少ない.ハゼ科の淡水魚であるキバラヨシノボリ(キバラ)は回遊性のクロヨシノボリ(クロ)を祖先型として,平行的に何度か回遊を止めて淡水域に適応し,生殖隔離を進化させたことが示唆されている.そこでキバラが淡水適応に伴って種分化した回数と地理的スケールを解明し,種分化の有無と生息場所面積の相関を検証することで,ある特定の適応進化に伴う種分化が生じる確率が生息場所面積に依存するかどうかを検討した.STR18座の遺伝子型に基づき近似ベイズ計算法を行い,島間と島内の両地理的スケールにおいて単一および独立起源モデルの適合性を比較した結果,キバラは基本的に島ごとに種分化したことが支持された.次にロジスティック回帰分析から,キバラの純種分化率(種分化率–絶滅率)は島の面積からよく予測された.このことは,島サイズに対して種分化率が正,また絶滅率が負の相関関係をもっていたことを示し,島サイズがもたらす河川生態系サイズなどの要因によりキバラの淡水適応に伴う種分化の生起が説明される可能性を示唆する.


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