| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-272 (Poster presentation)

可動サンゴに棲み込む新たな共生者の発見~ムシノスチョウジガイ属・スツボサンゴ属のサンゴと共生するホシムシおよびヤドカリ~

井川桃子*,加藤真(京大院・人環)

イシサンゴ目のムシノスチョウジガイ属とスツボサンゴ属のサンゴは、砂泥底で非固着生活を営む単体性のサンゴである。これらのサンゴの内部にはホシムシが棲み込んでおり、サンゴを引きずって動きまわるとともに、砂泥中への埋没からサンゴを救出する。一方、サンゴはホシムシを捕食者から防衛している。科の異なるこれら2属のサンゴがそっくりの共生関係を成立させたことは興味深い収斂進化であるが、共生するホシムシの分類や宿主特異性については解明されていない。そこで本研究では、沖縄県金武湾、奄美大島の大島海峡、高知県土佐湾よりこれら2属のサンゴを採集し、サンゴとホシムシの形態を調べ、ホシムシのDNAバーコーディングを行った。その結果、得られた単体サンゴはムシノスチョウジガイ属3種とスツボサンゴ属1種で、それらに共生するホシムシはタテホシムシ属4種で構成されていることが明らかになった。金武湾では2属2種のサンゴに2種のホシムシが共生しており、この2種のホシムシはどちらも2種のサンゴの両方から見つかった。これらの結果は、サンゴとホシムシの共生関係が種特異的ではないことを示唆している。さらに大島海峡では、2属のサンゴそれぞれの中に、ホシムシではなく1種のヤドカリが棲み込んでいるのが見つかった。このヤドカリは極めて特異な形態をした未記載種で、サンゴを砂泥中に埋没させることなく運搬するというホシムシの役割を継承しており、これらのサンゴに絶対共生をしていると考えられる。これらの結果は、単体性の可動サンゴとベントスとの賃貸共生がいかに成立し、いかに変遷していったかを知る手がかりを与えてくれる。


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