| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-311 (Poster presentation)

熱ショックタンパク質(Hsp)を指標としたオショロコマ個体群に対する河川水温上昇の影響を評価する

*倉橋 彩百合,鎌田 泰斗,関島 恒夫(新潟大学・院・自然科学),竹川 有哉(徳島大学・院・先端技術),谷口 義則(名城大学・理工),河口 洋一(徳島大学・院・先端技術)

オショロコマは、北太平洋沿岸水域に広く分布している冷水性魚類である。日本国内では北海道のみに生息しており、分布の南限にあたる。オショロコマの主要な生息地である知床半島の河川には数多くの砂防・治山ダムが設置されているが、温暖化による河川水温の上昇にダムに起因する水温上昇の影響が加われば、将来的にオショロコマ局所個体群の消失の可能性は高まるであろう。知床半島に生息するオショロコマの保全策を検討する上で、オショロコマ個体群に対する、温暖化による水温上昇の影響を適正に評価できることが強く求められている。

一般に、生物は熱ストレスに曝されたとき、熱ショックタンパク質(以下、Hsp)を発現することにより生体防御を行うことが知られている。主要なHspとしては、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp90、およびHsp110があげられる。Hspによる生体防御は、熱ストレスに対する応答として極めて重要な生理作用であり、熱ストレスを鋭敏に検出するための分子指標となる可能性が高い。

本研究では、はじめに、オショロコマに対し高温曝露実験を行い、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp90、およびHsp110の発現応答を解明し、熱ストレスを検知するための分子指標としての適性を検証した。次に、知床半島の河川に生息するオショロコマのHsp発現量と、ダム設置の有無や河川水温といった河川環境に加え、成長速度、生殖腺重量、および個体数密度といったオショロコマ個体及び個体群特性との関係を明らかにすることにより、今現在、知床半島に生息する本種の熱ストレス状況を評価した。


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