| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-315 (Poster presentation)

土地利用変化がトノサマガエルの食性に与える影響

*青木香澄,丑丸敦史(神大院・人間発達),兵藤不二夫(岡山大・異分野コア)

農業生態系において土地利用の変化に起因する生物多様性の低下が懸念されている。兵庫県南東部の平野部では水田周辺の都市化により,中山間地では水田自体の圃場整備や耕作放棄に伴うカエル類の減少が報告されている。土地利用の変化は生息地である水田の面積縮小や分断化、湛水期間の短縮、餌動物の減少を引き起こすことでカエル類を減少させていることが予測されるが、これらの要因を総合的に検証した研究は少ない。特に、餌生物の減少がカエル類の個体群維持へ与える影響については、多くの研究で見落とされてきた。近年、都市水田、圃場整備地や放棄地ではカエル類の餌となる節足動物の著しい減少が報告されており、餌生物の現存量や組成の変化がカエル類の個体群に影響を与える要因の1つと考えられる。

本研究ではトノサマガエルを対象とし、土地利用の変化が個体群維持へ与える影響を明らかにするため、土地利用の変化によって餌生物(節足動物)の多様性が減少し、トノサマガエルの餌資源の質と量が変化しているという仮説を立てた。

調査は伝統的管理が維持されている水田16ヶ所(中山間~都市域まで含む)、圃場整備地6ヶ所、放棄地6ヶ所で実施した。各サイト20m×1mの調査区を3区間設定し、個体数と体重・体長を計測し土地利用ごとに比較した。食性は強制嘔吐法を用い、胃内容物を採取し、餌生物の同定と体積の算出を行った。さらに窒素炭素安定同位体分析により調査地のトノサマガエルと植物体の炭素同位体比、窒素同位体比を計測した。

結果、土地利用が変化することでトノサマガエルの個体数が減少していた。検出された胃内容物から都市水田ではダンゴムシを利用している比率が高く、甲虫類を利用している比率が低かった。これらの結果から土地利用の変化がトノサマガエルの食性に与える影響について検討した。


日本生態学会