| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-320 (Poster presentation)

チャマダラセセリの生息地保全を目的とした3年間の植生管理の影響

*新井隆介(信大院・総合工/岩手林技セ),大窪久美子(信大・学術院農),中村康弘,永幡嘉之(日本チョウ類保全協会)

岩手県における絶滅危惧ⅠB類のチャマダラセセリの生息地は、食草のミツバツチグリが生育し、地面が露出したシバ群落である。本種の生息地保全のため、管理放棄による遷移進行がみられた半自然草原群落において2012年から植生管理を実施している。植生管理は刈取りと地面掻き出しで、4処理区はⅠ(2012、2014年9月実施)および、Ⅰ´(Ⅰに加え2013年9月に木本・藤本類を選択的に刈取り)、Ⅱ(2013年9月実施)、Ⅱ´(2013、2014年9月実施)とし、2013年6月に無処理区のⅢを設定した。2013年9月から2015年9月まで春季と秋季に、各区において植物社会学的植生調査と立地環境条件調査を、前者では本種の産卵・幼虫数調査を行った。2014年と2015年の春季における群落地際の相対光量子束密度の増減は、Ⅰ(+15.14%)とⅡ(-12.17%)の間に有意な差があった。また、同期間の植被率の増減は、Ⅰ(-13.83%)およびⅠ´(-11.67%)、Ⅱ´(-8.33%)とⅡ(+8.33%)の間に有意な差があった。両年秋季では、前者は各区間で有意な差はなかったが、後者はⅡ(+1.33%)とⅡ´(-11.67%)の間に有意な差があった。チャマダラセセリの産卵・幼虫数は、ⅠとⅠ´で2013年は平均0.29個・頭/m2であったが、2015年には平均0.13個・頭/m2と減少した。これは植生管理が2013年にⅡやⅡ´でも行われたため、産卵場所が分散したと考えられた。植生管理により一時的な春季の光条件の改善や植被率の低下、本種の産卵場所の分散といった効果があった。本種の生活史を配慮し隔年処理を基本としたが、本来の生息地であるシバ群落として保全を行うためには、高頻度の刈取りなど継続的な攪乱が必要であると考えられた。


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