| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-321 (Poster presentation)

奄美大島の森林における樹洞:生物多様性指標としての可能性

*井上奈津美(東大院・農),松本斉(東大院・農(現所属:株式会社ジーピーエス)),鷲谷いづみ(中大・理工)

樹洞は森林性の多くの動物が営巣や採餌に利用するマイクロハビタットであり、森林域の生物多様性指標の一つとなりうる。ケナガネズミ、リュウキュウコノハズクなどの生物多様性ホットスポットである南西諸島に生息する固有種やIUCNレッドリスト掲載種の中には樹洞利用種が少なくない。本研究は、奄美大島の伐採履歴の異なる森林域において、毎木調査により、樹洞の有無や大きさと樹木サイズ、樹種との関係を調べた。

合計26の調査区(各25×10m)について、航空写真から最近75年以内の皆伐または強度の伐採の有無を読み取り、合計683本の樹木を対象に調査を行った。スダジイは伐採の履歴の有無にかかわらずすべての調査区で優占していた。それに次いで伐採履歴がある林域ではリュウキュウマツ、伐採履歴がない林域ではイスノキが優占していた。伐採履歴がない林域では、有意に樹木サイズの大きい木が多かった。

胸高直径30㎝以上の樹木を対象とした調査において、記録された樹洞の数は合計418であり、そのうち90%以上はスダジイもしくはイスノキに形成されたものだった。GLMによる分析の結果、樹木サイズ(胸高直径)はイスノキにおける短径3㎝以上の樹洞の数およびイスノキならびにスダジイの短径6㎝以上の樹洞の数に有意な正の効果を示した。全樹洞のうち地面から1m以上の位置に形成され、樹洞営巣性鳥類が利用できる可能性が高い樹洞の割合は、イスノキ(80%)がスダジイ(50%)に比べて有意に大きかった。

これらの結果から、航空写真で把握できる樹木のサイズ(樹冠指数)およびおよその樹種構成から、樹洞に関して代替的な生物多様性指数を取得できる可能性が示唆された。

(共著者の追加:大谷雅人(兵庫県大・自然研),井上遠(東大院・農))


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