| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-326 (Poster presentation)

草刈り方法と土壌条件の不均一性が半自然草地における植物種の多様性に寄与する

丹野夕輝(静岡大・農,岐阜大・院・連農),山下雅幸,澤田 均(静岡大・農)

農地の植物の種多様性を保全する上で、管理方法や環境条件がどのように種多様性を維持しているかを理解することは重要である。日本の伝統的な農地では、複数の生育地タイプが混在するためにβ-多様性が高く、そのことにより種多様性が高く維持されていると考えられているが、定量的な解析は皆無である。そこで本研究では、草刈り方法の異なる半自然草地が混在する地域においてα-、β-多様性の大きさとその生起要因を推定した。

2012年7月から2013年6月に、静岡県菊川市と島田市の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)15か所と棚田畦畔2か所で調査を行った。コドラート(2.25 m2)を各調査地に4~20個ずつ設置し、コドラート内に出現する植物と開空率、土壌条件を調査した。Additive diversity partitioningの結果、生育地タイプ間β-多様性は在来植物の種多様性の30%を構成していた。年間1回草刈りされる茶草場には大型の多年生植物が多く、年間5回草刈りされる棚田畦畔には撹乱に依存する植物が優占したことから、生育地タイプ間β-多様性は主に草刈り方法の違いに起因すると考えられた。調査地間β-多様性とコドラート間β-多様性は合計で60%を構成していた。茶草場では土壌条件の空間変異が大きかった。土壌含水率、硝酸態窒素含量およびカルシウム含量とそれぞれ2種、1種、10種の植物の出現確率が正の関係、4種、13種、1種は負の関係にあった。この結果は、土壌条件に応じた種選別の存在を示唆する。これらのことから、草刈り方法の違いや土壌条件の不均一性が、β-多様性を高め、地域全体の種多様性に寄与しているものと考えられた。


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