| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-327 (Poster presentation)

シカと外来樹種ナンキンハゼの在来樹種カラスザンショウの更新に対する影響

*森家 侑生,名波 哲,伊東 明(大市大・院・理)

生物多様性保全のために、多くの生物の生息域となる森林の維持は重要である。奈良県の春日山原始林では以前よりシカの食害や外来樹種の分布拡大が報告されており、在来樹種の更新の阻害が懸念されている。本研究では、在来樹種カラスザンショウZanthoxylum ailanthoidesを用いて、シカや外来樹種による更新の阻害の程度を明らかにすることを目的とした。調査では同地域で分布拡大し、かつカラスザンショウと同所的に発生する外来樹種ナンキンハゼTriadica sebiferaを用いた。

2014年に採集した両種の当年生実生を林内の12か所に植栽し、シカの食害と種間の競合及び環境条件が両種の生存と成長に与える影響を調査した。調査は2014年8月初旬から11月中旬にかけて行った。

どちらの種も時間の経過とともに生存個体数が減少し、9月上旬から10月上旬においてカラスザンショウの生存個体数はナンキンハゼよりも大きく減少した。GLMMによる解析の結果、カラスザンショウの9月上旬から10月上旬の生存率にはナンキンハゼとの競合と斜面の傾斜が負の効果、シカの除去が正の効果を示した。ナンキンハゼの9月上旬から10月上旬の生存率には林冠の開空度が正の効果、斜面の傾斜が負の効果を示した。カラスザンショウの10月上旬から11月中旬の生存率にはシカの除去が正の効果を示した。ナンキンハゼの10月上旬から11月中旬の生存率にはカラスザンショウとの競合が負の効果、シカの除去が正の効果を示した。本研究からシカによるカラスザンショウの更新の阻害は、ナンキンハゼによるものより強いことが分かった。また、カラスザンショウとナンキンハゼは互いに生存への負の効果を及ぼし合うことが示された。


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