| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-329 (Poster presentation)

伊那盆地におけるナゴヤダルマガエルの生息状況の変化と他種との競合を含めた環境要因との関係

*日隈徳子(信大院・農研),大窪久美子(信大・学術院農)

近年、水田を主な生息地とするカエル類の減少が問題となっている。その中でも本研究では絶滅危惧種ナゴヤダルマガエルの隔離分布地での保全を検討するため、同所的に生息するトノサマガエルおよびツチガエルとの関係性を食性調査の結果から考察することを目的とした。

食性調査は2015年8月から10月上旬に4市町村5地区において、強制嘔吐法によって胃内容物を採取した。

その結果、3種において陸上性の餌動物が多く捕食されており、水田の畦畔に生息する種が餌資源として重要であると考えられた。また、ナゴヤダルマガエルについては頭胴長が小さい個体ほどアリ類を多く捕食していた。上陸したばかりの小さな個体にとって多くの栄養を採取することが必要であり、捕食しやすいアリ類を多く捕食していたと考えられた。よって畦畔を維持し、餌資源となるアリ類等の重要な餌動物の生息場所を確保することが必要であると考えられる。そしてナゴヤダルマガエルと他種の食性を比較した場合、トノサマガエルはチョウ目の幼虫を多く捕食していることが明らかになった。跳躍力のあるトノサマガエルが草本の上に生息する餌動物を捕食していたと考えられた。ツチガエルについてはアリ類を非常に多く捕食していた。ツチガエルはアリ類を専門的に捕食することが知られている。そのため、伊那盆地でもツチガエルはアリ類を好んで捕食していたと考えられた。

また、ナゴヤダルマガエルとトノサマガエルの餌動物は重複がみられ、後者の割合の高い地区ではその傾向がより高かった。今後、各地区でトノサマガエルの個体数密度が増加すれば、ナゴヤダルマガエルは餌資源を奪われる可能性があり、水田により依存する本種との競合関係が生じることが指摘された。


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