| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-330 (Poster presentation)

MIG-seq法によるゲノムワイドSNP分析によって明らかになったレブンアツモリソウの遺伝的な島内分化

*伏見愛雄(東北大・農),松木悠(東北大・農),河原孝行(森林総研),高橋英樹(北大・総合博),伊澤岳師(北大・農),陶山佳久(東北大・農)

レブンアツモリソウ(Cypripedium macranthos var. rebunense)は,北海道礼文島にのみ自生する多年生植物である.しかし過去に頻発した盗掘により本種の絶滅が危惧されている.本研究では,本種の適切な保全のために遺伝学的視点からの情報を提供することを目的として,自生地集団を対象としたゲノムワイドSNP分析により,集団遺伝学的解析を行った.

分析対象として,北部(2集団)と南部の自生地から各24,18,24株,及び近年自生地以外で発見された7株を用いた.また,本種と近縁種との雑種形成の可能性について調べるため,近縁種も対象として分析した.これらから抽出した全DNAを用いてMIG-seq法による次世代シーケンシングを行い,SNPを検出して集団遺伝学的解析を行った.またベイズ法による自生地集団の集団動態履歴の推定を行った.

自生地集団を対象とした234座のSNP分析の結果,集団間で遺伝的多様性のレベルに大きな差は見られなかったが,北部と南部集団ではその遺伝的組成が異なることが明らかになった.集団動態履歴解析では,北部と南部集団は7,000年以上前には集団分化し,両集団で数千個体程度が維持されていることが推定された.また島南部の自生地以外で発見された株からは,北部の遺伝的組成を持つ個体が検出された.自生地に出現した近縁種との交雑仮説については,推定される雑種関係が支持された.以上の結果から,南北それぞれの自生地集団は別々の保全単位として扱うべき必要性に加え,自生地および自生地以外の人為的移植等が疑われる同種・近縁種については,遺伝的汚染を防止する対策の必要性が示された.これらの成果は,本種の保全に適切に活かされる必要がある.


日本生態学会