| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-333 (Poster presentation)

千葉県北部に残る草原:植物種多様性に対する過去と現在の土地利用の影響

*野田顕(東邦大・理)・山ノ内崇志(東邦大・理)・小林翔(東邦大・理)・近藤昭彦(千葉大・環境リモセン)・西廣淳(東邦大・理)

草原は多様性と固有性の高い生物多様性の保全上重要な場である。しかし都市化や樹林化により草原は全国的に減少し、植物種多様性が低下している。本研究は、草原の植物の保全に資する基礎研究として、江戸時代に広大な草原が存在していたとされる千葉県北部を対象に、明治初期から現代までの草原の変遷を把握するとともに、草原に生育する植物の多様性に影響する要因を明らかにすることを目的とした。

国土地理院1/25000地形図における「白井」「小林」の範囲を対象に、明治期から現在までの複数の地図と文献を活用し、土地利用の変化を整理した。また2014年に対象範囲内の36か所の草原で植物相調査を行い、在来植物種数、草原性植物種数、外来植物種数に対する、局所的要因(草原面積や草刈りの有無)、空間的要因(隣接環境や近隣の草原面積)、時間的要因(農地や宅地として開発されなかった期間の長さ)の影響を解析した。

1880年代の草原の面積は、文献から地図上で樹林とされている場所も草原性植物の生育環境に該当することが示唆されたため、樹林と草原をあわせて最大で全体の53.8 %だった。1950年代での草原は最大で38.3 %となった。1980年代では樹林や畑が草原に変化し、その割合は11.6 %になった。2000年代では、前年代の草原の多くが宅地に変化したことで、割合は6.0 %になった。草原性植物種数に対して、草原面積が広いこと、草刈りが実施されていること、未開発期間が長いことの影響が示唆された。在来植物種数と外来植物種数については、局所的要因と空間的要因の重要性が示された。本研究の結果は、優先的に保全する場所の選定や、管理の再開により種多様性が回復できる場所を予測する上で有用である。


日本生態学会