| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-350 (Poster presentation)

「AUN長野大学恵みの森」におけるオオムラサキの生活史の解明: バタフライガーデンを活用した生態学教育の実践に向けて

*中田功大,高橋一秋(長野大・環境ツーリズム)

オオムラサキの生態学教育を目的としたバタフライガーデンを設置するにあたって、「AUN長野大学恵みの森」に生息するオオムラサキの生活史を調査した。

脱皮と羽化の季節的な時期と個体数の変化を把握するために、2014年5月~11月に野外観察(2個体)と飼育実験(4個体)を行い、脱皮と羽化の時期についてはオオムラサキセンター(山梨県北杜市)のデータと比較した。2015年4月~7月に屋外で行った飼育実験(2個体)では、幼虫のエサとなるエノキの葉を交換する前後に、葉の湿重量とサイズ(短径・長径)を計測し、幼虫の葉の摂食量(枚数と重量)を調査した。エノキ(24個体)を対象に、その樹冠サイズがオオムラサキの産卵場所や越冬場所の選択に影響を与えるかどうかを把握するために、幹の縁から50cmの円環状の調査枠を樹冠下に設置し、越冬幼虫の個体数をカウントするとともに、樹冠面積を計測した。

飼育実験下の幼虫は、蛹化の前後と越冬の前後に個体数を急激に減少させた。羽化に成功した幼虫(1個体)が起眠(3齢もしくは4齢)から羽化期の間(44日間)に摂食した葉の量は59.1枚であった。一方、羽化に成功できず、蛹化期を迎える前に死亡した幼虫(1個体)については、その間(44日間)に21.4枚の葉を摂食した。一般化線形混合モデル(GLMM)(ランダム効果:調査枠面積)とAICによるモデル選択の結果、樹冠面積は越冬幼虫の個体数に正の効果を与えていた。これらの結果をもとに、今後はバタフライガーデンの構想を練っていく。


日本生態学会