| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-358 (Poster presentation)

ミャンマー農山村地域における住民による林産物利用と森林減少・劣化

*三浦麻由子, 上田健太, 堀金司, 奥田敏統, 山田俊弘(広島大・総合科学), 松崎咲慧, 浅野祐紀子, 天野正博(早稲田・人間科学), Ei Ei Hlaing(ミャンマー森林研究所)

ミャンマーでは、森林減少・劣化が深刻な問題となっている。この原因には、地域住民による日常的な林産物利用も含まれるが、彼らにとっては生計の一部であるため即時禁止することはできず、森林保全との両立は非常に難しい問題となっている。

そこで本研究ではまず、ミャンマー農山村地域の森林の現状と住民による林産物の利用状況を明らかにし、その上で調査地域における効果的な森林管理法の提案を目指すこととした。調査は、多くの林産物が住民によって利用されているBago管区M村とその周辺林で実施し、政府管理や住民利用が異なる6つの森林タイプにおいて、森林の現状(地上部現存量,植物の種多様性)、住民による林産物利用、森林資源量の調査を実施した。なお、本調査地では木材資源の利用が禁止され、さらに森林局が一部に設置した試験林内では森林官による監視が行われている。

本調査地域は6つの森林タイプ(監視のある自然林,監視のない自然林,村から離れた自然林,管理プランテーション,放置プランテーション,竹プランテーション)に類型化され、それぞれに地上部現存量や生物多様性、森林資源量等の面で一長一短があることが明らかとなった。したがって、どれか一つの森林タイプが優占すれば良いということではなく、これらのモザイク性を維持させることが重要である。しかしながら、これらの中でも監視のない自然林においては過度の林産物利用と森林劣化が著しく、新たな森林管理法が必要であることが示唆された。本調査地域において、こうした問題解決を図る上で実現性の高い森林管理法としては、住民参加型のコミュニティ・フォレストリーが挙げられる。


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