| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-359 (Poster presentation)

里山ビオトープにおける水生動物の非破壊調査法の開発

*石栗祐太(新潟大・農),内田浩勝(建設技術研究所),吉川夏樹(新潟大・農),元永佳孝(新潟大・農),本間航介(新潟大・農)

里山にある水田や水路のような水深の極めて浅い水辺(以下、超浅水域)において生態調査を行う場合、一般的な網によるすくい取りは、撹乱による影響は無視出来ず、継続的モニタリングにも適さない。本研究では、超浅水域に生息する生物の新しい非破壊探査の1つとして、医療用の超音波画像診断装置の野外調査における有効性を検討した。

超音波画像診断装置の反射・透過の様子の確認をするため、様々な表面硬度のサンプルを用意し室内実験を行った。次に、野外での有効性を検討するため、新潟県佐渡市新穂地区の承水路(江)で、0.5m×0.5mのコドラートを7区画設置し、超音波画像診断装置で生物数及び生物種をカウントした。直後に、区画内に網を入れ生物を調査し結果を比較した。

表面硬度の違いでは、硬度が高すぎる場合は反射が強すぎるため見にくくなるが、低い場合は透過することが判った。生物体や内部に水分を多く含むサンプルは、反射と透過のバラスがとれ観察が容易であった。また、泥の巻き上げで視界が遮られた状態で、複数サンプルを探査し個体数を求める実験を行った。試行回数120回に対し、正答率90%以上の確率が88%を占め、適度な反射率のサンプルであれば、高確率で計測が可能であった。野外調査では、アメリカザリガニ、ドジョウ、カワニナを視認することができ、平均86.5%の精度で生物の有無を見分けることができた。本手法は透視度の低い水やコロイドに強く、原理的に日照条件にも左右されないため、光学的手法が使えない条件では、非破壊モニタリングの唯一の選択肢といえる。


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