| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-364 (Poster presentation)

森林伐採が里山に与える影響の数理的研究 ~環境価値・経済的価値をめぐるゲーム~

*髙木俊甫(北大・環境),高田壮則(北大・地環)

里山は古くから薪炭や木材といった生態系サービスを供給する場として利用されてきたが、今日、薪炭林や人工林の管理放棄が進むとともに、生物多様性が減少し、森林が持つ生態系サービスが劣化してきている。そこで、本研究では、生物多様性指標を利用した環境価値、および樹木の価格を考慮した経済的価値を導入し、適切な里山の管理方法を考えた。

陰陽混交林の平衡点における環境価値と経済的価値を用いて、それぞれを重視する保全的利用者と林業的利用者の非協力、協力ゲームを考案した。非協力ゲームは各々が利得の最大化を試みるゲームである。協力ゲームは保全的利用者と林業的利用者が協力して、環境価値と経済的価値の和の最大化を試みるゲームである。前者ではナッシュ均衡を、後者では和の最大値を与える解を適切な伐採方法とし、これらのゲームを解析した。

非協力ゲームでは5つの戦略の組み合わせについて解析した。その結果、ナッシュ解をもつ戦略の組み合わせが3つ得られた。2種類の組み合わせでは、保全的利用者が一切伐採を行わない解が得られた。しかし、ある組み合わせでは、保全的利用者が伐採を行うナッシュ解が得られた。この理由は、陰樹を伐採することで陽樹への被陰効果を減らし、生物多様性を高めることができるからである。また、両者が陰樹を伐採するとき、ナッシュ解は得られなかった。これは、保全的利用者は陽樹を被陰する陰樹を伐採したいと考え、林業的利用者は自身の収入を大きくするために、陰樹をより多く伐採したいと考えることに拠る。協力ゲームでは、数値解析から陽樹の単価が陰樹の単価より高いとき、陽樹、陰樹の伐採率がともに大きくなり、陽樹の単価が陰樹の単価より低いとき、陽樹、陰樹の伐採率がともに小さくなることが明らかになった。


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