| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-392 (Poster presentation)

キタアメリカフジツボの侵入初期の局所個体群動態:住み着き率と絶滅率の時間変化とその要因

*大平昌史,岩崎藍子,金森由妃,平賀優大,胡之陽,立花道草(北大・院・環境),深谷肇一(統数研),野田隆史(北大・地球環境)

キタアメリカフジツボは、北米太平洋岸の岩礁潮間帯の固着生物群集の優占種であり、南米や南アフリカでは侵略的外来種として在来生物群集に甚大なダメージを及ぼすことが知られている。本種は2000年代初頭に北海道東部に侵入し、その後急速に分布を拡大したが、その後はいったん減少し、未だに北海道東部では岩礁潮間帯の固着生物群集優占種の位置を占めるには至っていない。北海道東部は原産地と環境や生物群集の組成が類似しているにも関わらず、侵入後どうしてこのように増加できないのかを探るため、北海道東部の多数の岩礁で局所個体群の住み着きと絶滅の動態を追跡し、それに関わる要因の抽出を試みた。

北海道東部の5海岸のそれぞれ5岩礁の計25岩礁で2006年から2015年までの期間、本種の存否を追跡調査し、岩礁単位での個体群の成立(住み着き)と絶滅を記録した。さらに、本種の住み着き率と絶滅率に影響する要因として、本種の(1)被度および(2)幼生供給量、(3)本種の競争種である在来フジツボの被度、(4)捕食性巻貝の個体数、(5)空き地の量、(6)岩礁表面の起伏度、(7)流氷の強度、(8)侵入からの経過時間をとりあげ、これらが住み着き率と絶滅率に及ぼす影響を解析した。

その結果、侵入後の経過時間が経つと住み着き率は上昇し、流氷が来ると住み着き率は低下し、絶滅率は上昇した。これらのことから、北海道東部のキタアメリカフジツボの局所個体群動態は流氷の有無に大きく影響される事が示唆された。これは、本種の原産地ではほとんど流氷に見舞われないことと関連しているかもしれない。


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