| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-393 (Poster presentation)

ハクビシンは夏期にどのような果実を利用しているのか:茨城県都市近郊地域の事例

*岩間正和(東京農工大院・農), 山﨑晃司(東京農大), 松山美帆(東京農工大院・農), 星野義延, 金子弥生(東京農工大農学研究院)

ハクビシン (Paguma larvata) は主に東南アジアの原産で日本では外来種である。中国及び日本では果実中心の雑食性であることが知られているが、ハクビシンの果実利用に関する日本での研究は少ない。本研究では、茨城県都市近郊に生息するハクビシンの、夏期 (2009~2014年6~8月)の胃内容物中に出現した種子について、可能な限り同定を行った。果実の出現頻度は77.0%を占め、バラ科 (Rosaceae)が他の種子よりも圧倒的に多く、その中でもサクラ属(Cerasus)が多かった。果実の主食はバラ科やグミ科 (Elaeagnaceae) (6月) からクスノキ科 (Lauraceae) (7月)、そしてカキノキ (Diospyros kaki)やエノキ (Celtis sinensis) (8月) へと変化した。これらの種子は木本、特に高木が多かった。各胃内容物あたり平均で約1.8種類の果実が利用され、最大で5種類の利用がみられた。種子の短径は1~4mmの小型の種子が多く (レンジ1~16mm)、有意差こそなかった (一般化線形モデル) ものの2番目に多い種子短径のピークが月ごとに差がみられた。さらに、出現した種子の9割以上が、まだ胃内容物の段階にもかかわらず果肉に包まれておらず、水分含有量の多い果実を一度に大量に摂取している個体が多いものと思われた。本種の半樹上性の生活様式は果実食に有利に働いているものと推測される。さらに、鳥類と比較して比較的堅い種子を持つ大きな果実 も食べることができるため、近年の生息地拡大によって都市や近郊の種子分散にも影響を与える可能性が示唆される。


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