| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-400 (Poster presentation)

在来カタバミと近縁外来種の交雑過程と浸透性交雑の可能性

*深津美佐紀,堂囿いくみ(学芸大・院・環境科学),堀江佐知子(東北大・院・生命科学),牧雅之(東北大・植物園)

在来種と近縁外来種の交雑は,在来種の繁殖や遺伝的特性に影響を与える。在来種カタバミ(カタバミ科)と近縁外来種オッタチカタバミは同所的に生育し,2種の中間形質を持つ不明種個体が観察された。本研究では,不明種の雑種判定および交雑過程と浸透性交雑の可能性を明らかにすることを目的とした。(1)不明種の染色体数およびDNA量は,在来種と外来種の中間値を示した。ITS領域の制限酵素断片長多型を解析した結果,在来種と外来種はそれぞれ異なるアリルに固定していたが,不明種はすべてヘテロだった。(2)交配実験により在来種と外来種のF1雑種が生じ,外来種を胚珠親とした場合の種子生産が高かった。(3)不明種の稔性を確認したところ,雌性・雄性ともに不稔だった。(4)葉緑体trnS - G領域の制限酵素断片長多型を解析した結果,不明種26個体中22個体は外来種アリル,4個体は在来種アリルを示した。(5)3種の開花期は重なり,送粉者は種間をランダムに訪花した。(6)在来種と外来種の自動自家受粉による種子生産は高く,つぼみの時にすでに自家花粉が付着していた。在来種と外来種に同種・異種の花粉を混合して受粉させたところ,種子生産は同種交配と同等であった。

在来種と外来種は野外で交雑し雑種が生じているが,全てF1個体と考えられる。雑種は外来種が胚珠親の時に形成されやすいが,雑種不稔なので浸透性交雑は生じないと考えられる。自動自家受粉による種子生産が高いことから,野外集団で異種花粉が送粉されても受精する機会は少なく,雑種種子は生じにくいと考えられる。よって,在来カタバミにとって外来種との交雑による影響は少なく,外来種や雑種とともに共存している可能性が示唆された。


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