| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-402 (Poster presentation)

音声モニタリングで外来カエルの繁殖時期は推定できるか?

*更科美帆,吉田剛司(酪農学園大学院・野生動物)

カエル類の世界各地な減少に伴い、カエル類の長期的なモニタリングが必要とされてきた。近年では、日本国内でもカエル類の鳴き声を指標とした音声モニタリングが各地で実施されている。一方で、外来カエルによる生態系への被害も多数報告されている。外来カエルによる在来カエルへの影響の一つとして、繁殖場所を巡る競合が考えられる。しかし、外来カエルの繁殖に関する情報は不足している。そこで本研究では、北海道に生息する外来カエルの繁殖時期を明らかにするため、北海道石狩地域の外来カエルが生息する5地点にて自動録音装置を用いた音声モニタリングを実施した。2014年の4月から10月の間に、自動録音装置をため池、水田、湿地にて地面から50cm程度の高さに設置し、20時から10分間の音声を毎日録音した。その結果、在来のニホンアマガエルHyla japonicaとエゾアカガエルRana pirica、外来のアズマヒキガエルBufo japonicus formosus、トノサマガエルPelophylax nigromaculatus、トウキョウダルマガエルP. porosus porosus、ツチガエルGlandirana rugosaの鳴き声を確認できた。エゾアカガエルの初鳴きが最も早く(4月中旬)、次にトノサマガエル(4月27日)とアズマヒキガエル(5月3日)が早かった。トウキョウダルマガエルは5月15日、ツチガエルは5月28日が初鳴きだった。関東の事例ではトノサマガエルは5月初旬、ツチガエルは6月中旬が繁殖期の開始であり 、北海道は開始が早いことが判明したが、トウキョウダルマガエルは原産地よりもやや遅い 結果となった。アズマヒキガエルは山地 での繁殖時期に類似した。さらにアズマヒキガエルは在来のエゾアカガエルと同所で同時期に繁殖行動をしていることが判明し、繁殖場所を巡る競合の可能性が明らかとなった。


日本生態学会