| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-408 (Poster presentation)

陸域生態系モデルのデータ同化に関する研究

*池田成貴(京都大・農), 伊勢武史(京都大・フィールド研)

データ同化は陸上生態系モデルの最適化に役立つことが期待されているが、陸上生態系プロセスの複雑さゆえに、データ同化の利用はあまり進んでいない。そこで本研究では、これまでは十分に利用の検討がなされていなかった粒子フィルタを利用することで、陸上生態系モデルへのデータ同化の実装が可能であることを確かめた。

モデルはSSSEMという物を用いた。このモデルはオリジナルでは常緑の森林しか再現出来ないため、広く陸上生態系プロセスの予測に用いるには適さなかった。そこで落葉を伴う森林の予測にも適用できるよう季節性を再現する改良を加えた。具体的には、展葉・落葉の時期を決定するために気温から計算される指標を用意し、指標がその値を越えると展葉または落葉が開始されるという閾値のパラメータをそれぞれに設定した。

しかし、上述した改良のようなある条件によって挙動を変化させる要素を含むモデルにデータ同化を実装するには、現在主流とされるEnKFでは不可能である。そこで、本研究では粒子フィルタという様々なモデルに対して適用可能な手法を用いることで、これまでの手法では不可能であった今回の改良モデルに対するデータ同化を試みた。

以上のように、改良したモデルに粒子フィルタによるデータ同化を行った結果、落葉を伴う森林に対しても高い再現性を得ることが出来た。また改良で加えた閾値を示すパラメータに関してもデータ同化の結果一定の値に収束する傾向が得られた。

これらの事から、粒子フィルタを用いることで条件によって挙動が変わる複雑な陸上生態系モデルへのデータ同化の実装は、可能であることが明らかになった。また、このモデルとデータ同化手法を用いることで、各地における森林が温暖化等による気温の上昇に対してどのように変化するかを探れる可能性が示された。


日本生態学会