| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-010 (Poster presentation)

八ケ岳東麓の湿地林における立地環境の違いによる8年間の樹木更新動態パターン

*清野達之,宮田恵美,高久朋子,菊地亜矢子,川田清和,上條隆志(筑波大・生命環境)

八ヶ岳東麓に位置する長野県南佐久郡南牧村の筑波大学八ヶ岳演習林内の湿地林とそれに近接する林分の2006年から2014年までの8年間における森林構造の変化と動態を調査した. 2006年に林内に設置した1ha の森林調査区内に出現した樹木で,胸高直径 5 cm以上の個体を対象に,幹成長の追跡と生残,新規加入個体の記録を行なった.調査期間に大型の台風による大規模な攪乱の発生は観察されなかった.その結果,調査区では湿地状の地下水位の高い立地環境にズミとハンノキが優占し,その周囲の地下水位の低い立地環境にミズナラとヤエガワカンバが優占した.ハンノキは湿地状の立地環境で死亡個体と新加入個体が多く観察され,胸高直径階はL字型分布をしていた.しかし,近接する地下水位が低い立地環境への侵入は観られなかった.ズミは調査区内広域で観察され,立地環境に偏った動態は観察されなかった.ミズナラとヤエガワカンバは一斉更新が推察される一山型分布を示す胸高直径階を示し,地下水位が高い立地環境への新規加入は観察されなかった.比較的大きな攪乱がなかったこともあり,調査期間で胸高断面積に大きな変化はなく,微増していた.全天写真による2006年と2014年の開空度を比較すると,2006年と比較して2014年の開空度は低くなっていた.これは地下水位が高い湿地状の立地環境でのハンノキの新規加入が効いていることが推察される.このままの動態が続くと,湿地状の立地環境にハンノキが多く侵入し続けることで立地環境に変化が生じ,やがては調査区全域でミズナラとヤエガワカンバが優占するような林分へ推移することが予想される.


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