| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-033 (Poster presentation)

植生調査データを用いた希少植物の生育環境類型化

阿部聖哉(電中研・生物環境)

希少植物保全のためには、保全対象種の生育場所を推定することが必要である。環境影響評価法では、2011年の法改正で新たに計画段階環境配慮書の手続きが追加され、事業の早い段階での影響の回避や低減などの措置を、既存資料から得られる簡易な評価で検討することが可能となった。しかし、事業地周辺で入手できる既存の情報は限られており、データが入手できなかった場合には、図鑑等の記述と対象範囲の植生図から生育場所を推定せざるを得ない。一方で、図鑑等の記述は植生分類の知見が十分反映されておらず、植生図の凡例と結び付けることが困難である場合も少なくない。そこで自然環境保全基礎調査で蓄積されつつある第6~7回植生調査のデータを活用し、希少植物の生育環境を類型化することを試みた。なお、調査データのうち国で指定された絶滅危惧種Ⅱ類以上のランクの種は非公開とされているため、準絶滅危惧種を対象に検討を行った。

全国の21708地点のデータから、5地点以上に出現した69種の準絶滅危惧種の生育する植生調査資料1129件を抽出し、表操作によって群落の区分を行った。群落の区分においては、既存の群落体系および植生図の統一凡例表との整合性を重視し、できるだけ大きなまとまりで分類した。表操作の結果、129の群落単位が認められ、クラス、オーダーなどの上級単位の位置付けが確認された。次いで、準絶滅危惧種の出現状況をもとに、既往の知見も加味し、生育環境の類型化を行った。その結果、上級単位の異なる複数の群落単位が、高山植生、塩沼地など18の生育環境類型にまとめられることが分かった。

希少植物の生育環境類型化に際しては、過去に蓄積された植生調査データを活用することにより、図鑑などの記載情報よりも詳細な情報が得られるとともに、植生図の凡例との対応関係を明確に示すことが可能になる。


日本生態学会