| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-054 (Poster presentation)

環境DNA技術を沈水植物に適用する:調査手法の検討と有用性の評価

*松橋彩衣子(兵庫県大・院・シミュレーション),源利文(神戸大・院・人間発達環境),藤原綾香(神戸大・院・人間発達環境),渡邉園子(広島大・院・国際協力),山中裕樹(龍谷大・理工),土居秀幸(兵庫県大・院・シミュレーション)

環境DNA法(水中の浮遊DNAから生息生物を推定する手法)は、魚類や両生類の迅速な分布推定法として急速に発展しているが、水生植物における知見は未だ乏しい。本研究では、本技術を水生植物への適用にあたり重要となる次の3つの疑問の解明を目指した。1)環境DNAとして検出されるのはどのくらいの大きさの組織片か、2)自然集団において環境DNA量は季節変化するか、3)環境DNA法を用いた分布推定は従来の分布調査と比較して検出力は高いか、これらをトチカガミ科沈水植物オオカナダモとクロモを用いて検証した。

1)の検証のため、オオカナダモが生育する河川・池の水を7種類のフィルターで濾過しサイズ分画を行った。各フィルターからDNAを抽出し、定量PCRにより各分画のDNA 量を調べた。次に2)の検証のため、クロモが生育する池を対象に春から冬にかけて5回採水し、環境DNA量の季節変化を調べた。そして3)の検証のため、過去のクロモの分布情報がある21か所の池を対象に、目視による調査と環境DNA法による分布推定のどちらが過去の分布情報と一致するかを比較した。その結果、1)環境DNAは0.2µm以下~100µm以上の様々なサイズの組織片から検出されること、2)環境DNA量は季節変化し、植物体地上部が消失する冬季には検出できない場合があること、3)環境DNA法による分布推定は目視調査よりも対象種の検出力が高い可能性があることが明らかとなった。これらは、環境DNA法による水生植物の分布調査への有用性を示唆すると同時に、推定精度の向上のためには、採水・DNA抽出法や調査時期の検討が重要であることを示している。


日本生態学会