| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-064 (Poster presentation)

ヤマザクラの急性乾燥ストレス評価における遅延蛍光の有効性

*今西純一 (京大・地環), 小林祐子 (浜松ホトニクス(株)),勝又政和 (浜松ホトニクス(株))

植物は生存のために水分が必要で,水分欠乏により多くの代謝過程が阻害され,脱水が続くとついには枯死する。そのため,樹木の生理学的,生態学的研究や実務的管理において乾燥ストレス状態を把握することは欠かせない。しかし,標準的方法とされるサイクロメータ法は測定に長時間を要し,室内実験で広く用いられるプレッシャーチャンバー法は高圧ガスを用いるため安全面に課題がある。そのため,より簡便に樹木の乾燥ストレス状態を把握するために,樹冠温度や樹冠分光反射特性,クロロフィル蛍光に基づいて乾燥ストレス状態を評価する研究が行われているが,精度向上が課題となっている。そこで,本研究はクロロフィル蛍光とは発光起源が異なる遅延蛍光に新たに注目し,樹木の乾燥ストレス状態を評価する方法について検討を行った。ヤマザクラの葉を対象にプレッシャーチャンバーを用いて水ポテンシャル−3.0 MPaまでの急性乾燥ストレスを負荷する実験を行った結果,遅延蛍光量を指標とした場合は0.1~2.0秒頃,2時刻の遅延蛍光量の比を指標とした場合は0.5~2.0秒頃に水ポテンシャルとの相関がもっとも強くなることが示された。これらの指標は,クロロフィル蛍光に基づくFv/Fmよりも水ポテンシャルとの相関が強く,水ポテンシャルの推定精度も高かった。他種でも同様の結果が得られるかを確かめる必要はあるが,遅延蛍光は急性乾燥ストレスの指標として優れている可能性が示唆された。


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