| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-072 (Poster presentation)

北方針葉樹種ポット苗における灌水停止後の生理生態特性の反応

原山尚徳(森林総研北海道)

地球温暖化にともなう森林への渇水影響の増大が予測されているが、渇水による樹木枯死の生理メカニズムは未解明である。そこで、枯死メカニズムの主要因とされている通水阻害と炭水化物欠乏について、冷温帯の主要造林樹種であるトドマツ、カラマツを対象に研究を行った。ポット苗を用いた潅水停止実験を行い、明け方の木部圧ポテンシャル、針葉を含む当年生シュートの通水コンダクタンスと気孔コンダクタンス、1年生幹の水分通導度の経時変化および枯死が生じた時の針葉、1年生幹、主根の糖・デンプン濃度を測定した。両樹種ともに、1年生幹よりも針葉を含む当年生シュートの方が、木部圧ポテンシャルの低下に対して急激に通水性が低下した。通水性が最大の50%になる時の木部圧ポテンシャル(P50)は、1年生幹より当年生シュートの方が高く、当年生シュートの方が通水阻害を生じやすかった。気孔閉鎖時の木部圧ポテンシャル(Pgs12)は、トドマツでは当年生シュートや1年生幹のP50よりもはるかに高く、針葉や幹の通水阻害を生じさせないように木部圧ポテンシャルの低下に対して早めに気孔を閉じていた。一方、カラマツのPgs12は1年生幹のP50よりも高かったが、当年生シュートのP50と同等であり、当年生シュートの通水阻害と気孔の閉鎖がほぼ同時期に生じていた。樹種間で比較すると、当年生シュートおよび1年生幹のP50はカラマツよりもトドマツの方が低く、より低い水ポテンシャルまで通水性を維持できた。一方、Pgs12に樹種差は認められなかった。大会では、これら通水阻害の結果に糖・デンプン濃度のデータを加えて、トドマツとカラマツにおける渇水時の通水阻害と炭素欠乏の進行について議論する。


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