| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-096 (Poster presentation)

網羅的に見る陸上生態系の呼吸スケーリング  -菌類、草本、木本の共通点と相違点ー

*森茂太,王莫非,芳士戸啓,相澤拓,芳賀由晃(山形大農学部)

陸上生物は水界から進化して、地球環境を変えつつその環境に適応してきた。特に、陸上植物は大型化により地球環境への影響力を高めつつ進化してきた。中でも樹木は1兆倍の重量巾で成長する。一方で、大個体がバイオマスの大半を占める森林生態系の循環は、微生物により支えられている側面もあり、小さな生物と大きな生物は生物体量と機能を補完しつつネットワークを形成している。この点で、呼吸スケーリングは生態系の機能と構造を結びける基盤の一つである。

我々は、陸上植物を中心に多様な系統や環境の生物個体呼吸を広いサイズで実測した。材料は、草本や木本を含む亜寒帯から熱帯の陸上植物(維管束植物、シダ植物、コケ類)、沈水植物、タケ類、作物(トウモロコシ、イネ品種、カブ、ダイコン)、雑草類、担子菌子実体など網羅的系統、環境の生物個体(菌類子実体、タケシュート含む)である。これらは数ミリグラムの種子、発根種子、実生から10トンを超え、樹高33mの個体サイズで、個体全体を密閉式チャンバーに入れて正確に実測した。測定総数は約1000個体である。

本発表では、様々な目的で測定してきた生物個体の呼吸とサイズの関係を俯瞰したい。その結果、陸上植物では系統や環境の制御を越え、種子から大木まで広いスケールで個体サイズのみに依存するロバスト性を示すと考えられる「地上部と地下部の呼吸バランス」も見出された。一方で、大きく系統が異なるにもかかわらず環境によって類似したスケーリングや、同じ系統であるが環境により異なるスケーリングなどもあった。

本発表では、多様な生物の呼吸スケーリングをまとめて、系統や環境で生物個体がどのような類似点と相違点を持つかを検討して、今のMetabolic Ecologyの問題点と方向性を実測データから提示する。


日本生態学会