| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-121 (Poster presentation)

オオバギ属植物(トウダイグサ科)の開花フェノロジー

*山崎絵理, 清水健太郎(チューリッヒ大)

年間の季節性に乏しい東南アジアの熱帯林では、数年に一度様々な分類群が一斉に花を咲かせる「一斉開花」という現象が知られている。これまで多くの研究者がこの現象について調べており、不規則に発生する長期間の乾燥や低温が開花の要因であることが示唆されてきた。さらに近年では、東南アジア熱帯林の主要な構成樹種であるフタバガキ科において、長期間の乾燥によって開花に関連する遺伝子の発現パターンが変化し、それに続いて開花が起こることが報告されている。一方、半数以上の植物が一斉開花期以外にも花を咲かせるが、これらの植物がどのような環境要因を開花の発端にしているのかはまだ分かっていない。また、一斉開花では様々な分類群の植物が同調して開花するが、共通の遺伝的背景をもつのかどうかはまだ知られていない。

我々は2014年7月からボルネオ島ランビル国立公園において、トウダイグサ科オオバギ属植物の開花フェノロジーとその遺伝的背景を調べており、今回は開花フェノロジー観察の結果を報告する。対象としている種はMacaranga bancana, M. beccariana, M. conifera, M. winkleriの4種である。それぞれの種について10–15個体を週に1度観察したところ、開花パターンは3つに分類された。まずM. coniferaは19ヶ月の調査期間のうち一度も開花の兆候が見られなかった。M. bancanaM. beccarianaでは、23–90%の個体が同調する開花がそれぞれ3度ずつ起こり、にM. winkleriではほぼ全ての個体で全期間にわたって開花が見られた。M. bancanaM. beccarianaの開花はほぼ同調していたことから、これらの種は同じ環境要因を開花のきっかけとして利用していると考えられる。本発表では、これらの開花フェノロジーと気象の関係についても考察したい。


日本生態学会