| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-135 (Poster presentation)

ブナ林において外生菌根菌群集は季節性を見せるのか

*杉山 賢子 (京大 理学部), 松岡 俊将 (京大 生態研センター), 大園 享司 (京大 生態研センター)

外生菌根菌は森林で優占的な樹木と共生し, ホストの植物との間で相利的な養分の交換を行っている. 外生菌根菌の種多様性は非常に高く, その空間分布や時間動態は関心を集めてきた. しかし, 空間分布がホストの樹種や気候, 土壌条件, 空間性などの影響を受けて変化するということがよく知られる一方で, 時間動態に関しては群集レベルでの研究が限られ, 長期での変化は遷移として, 年内の変化は季節性として解釈されることが多かった. 特に短期での群集動態が具体的にどのような要因の影響を受けているのかはほとんど知られていない. これを受け, 今回, 外生菌根菌が短かい期間でどのような時間動態を示すのか, またその動態がどのような要因の影響を受けているのかを解析することを目的として本研究を行った.

調査は京都府南丹市美山町芦生のブナ(Fagus crenata)林にプロット(50×10m)を設置して行った. 2013年, 2014年の5-11月に約1月ごとにプロット内からブナの根を含む土壌ブロック(10×10×10cm)25個を採取し, その中から外生菌根を選び出してDNAを抽出, 菌類特異的なプライマーでPCRを行った後, Roche454シーケンサーを用いて菌類rDNAのITS1領域の塩基配列を決定した. 得られた配列は97%の相同性閾値で操作的分類群(OTU)にわけ, データベースと照合することで分類群を決定した.

2年間のサンプリングで24科142 OTUの外生菌根菌が得られ, 特に12回のサンプリング全てでベニタケ科, イボタケ科が最もOTU多様性の高い科であった. 2年間を通じて外生菌根菌の群集は線形に変化しており, サンプリング回ごとの群集組成の違いは土壌条件・気候・時間の3つのうち時間により最もよく説明された.


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