| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-152 (Poster presentation)

分断化された二次草地に生息する昆虫個体群の空間遺伝構造

*宮下 直(東大・農),今藤夏子(国立環境研),谷川明男,清川紘樹,中島一豪(東大・農),陶山佳久,松木 悠(東北大・農),坂入一瑳,長谷川雅美(東邦大・理)

我が国の二次草地には、希少な動植物が生息している。都市近郊の二次草地もそうした生物の宝庫であったが、近年の開発などにより面積の縮小と分断化が著しい。昆虫類は飛翔能力をもつため、ある程度の分断化には耐性があると思われるが、分断化が進むと局所絶滅が急激に進行する可能性がある。我々は千葉県北総台地に点在する二次草地群を対象に、昆虫類の個体数や分布の決定要因の調査を進めている。この地域は、江戸時代は「牧」が広がり、明治以降も明るいアカマツ林を中心とした草原性環境が広がっていたが、戦後の管理放棄とアーバン・スプロールの波を受け、ここ数十年で大幅に減少している。こうした状況下では、優先的に保全すべき草地を特定する必要がある。そのためには局所環境の評価に加え、生物の移動を通した草地のネットワーク構造を把握する必要がある。本研究では、この地域で優占しているジャノメチョウやバッタ類を対象に遺伝子の空間構造を明らかにし、生息地のネットワーク構造を明らかにすることを目的としている。ジャノメチョウについては22地点で計267匹、バッタ類は5種で計1232匹を採集し、それらの遺伝子解析を進めている。遺伝的多型は、MIG-seq(Multiplexed ISSR Genotyping by sequencing)(Suyama and Matsuki 2015)により探索したSNPに基いて推定した。本手法は、SSRを含むプライマーで増幅したPCR産物を次世代シーケンサーでアンプリコン解析するもので、比較的少ない労力でゲノムワイドにSNPを探索できる。各個体の抽出DNAからMIG-seqによって得られたSNPについて、structureにより空間構造を予備的に解析した結果について報告する。


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