| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-166 (Poster presentation)

東北地方の津波浸水域に出現した湿生・水生植物相の特徴

鈴木まほろ(岩手県立博物館)

東北地方の太平洋岸では、2011年3月11日の地震による地盤沈降と液状化、さらに津波による侵食でできた窪みに、壊れた堤防や水路から溢れた水が溜まり、多数の湿地が出現した。また以前からあった池や水田でも、底土が激しく撹乱され海水が溜まった。復旧工事が始まるまでの数年間に、これらの湿地では多様な植物の生育が観察された。

津波後に出現した植物相に興味を持ち、多くの研究者や地元の植物愛好家が調査を行った。これらの調査結果を集め、海岸部を除き、湿生・水生植物を抽出してフロラリストを作成したところ、計201種に上った。調査地点は岩手・宮城・福島県の合計79ヶ所、海岸線から直線距離で170~5000mの範囲にあった。

このフロラリストには50種のレッドリスト掲載種と23種の外来種が含まれていた。最も多くの地点で記録された種はミズアオイ(40地点)で、次にツツイトモ(21地点)とチャボイ(15地点)が続いた。普通種よりも希少種の頻度が高かったのは、記録にバイアスがあるためである。

生育形で見ると、湿生植物が140種と最も多く、抽水植物は23種、沈水植物は16種、浮葉・浮遊植物は8種記録された。これらのほとんどは埋土種子に由来するものと考えられる。また塩性湿地特有の種が15種、砂浜や海崖に特徴的な種が18種記録され、津波によって種子等が運ばれたものと推測された。

日本ではこれまで、放棄水田(中本ら2000、北川ら2010)や湖岸(霞ヶ浦:Nishihiro et al. 2006)、淡水干拓地(松本ら2009)、海岸ヨシ原(安島ら2000)などから採取した埋土種子の蒔き出しにより、水生・湿生植物相の復元が試みられてきた。今回のフロラリストとこれら復元植物相との類似度を比較したところ、分類学的近縁度を考慮した場合と考慮しない場合のいずれも、霞ヶ浦が最も類似度が高く、次に福井県の中池見が続いた。


日本生態学会