| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-225 (Poster presentation)

日本のクスノキは外来種か?

*亀山慶晃(東農大・地域), 古道潤(東農大・地域), Jingxiu Li (Kunming Inst. Bot.), Yen-Hsueh Tseng (Nat. Chung Hsing Univ.), 鈴木貢次郎(東農大・地域)

植物の適切な利用と保全の為には、遺伝的な保全単位を明らかにする必要がある。しかし、植物集団の遺伝的組成は自然科学的要因と社会科学的要因の双方により、時間的・空間的に大きく変化する。クスノキはこのような植物の代表的存在であり、信仰対象としての巨樹・巨木、樟脳生産や木材生産を目的とした植栽林、緑化や街路樹生産を目的とした生産圃場などが同一地域に混在している。本研究の目的は、クスノキの遺伝的な地域性とその形成プロセスを明らかにし、適切な保全単位を提示することである。11遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて、日本、中国、台湾各地に生育するクスノキ、計817サンプル(804ジェネット)の遺伝分析をおこなった。STRUCTURE解析の結果、「日本」と「中国・台湾」に生育するクスノキは、集団の特性や個体サイズに関わらず、系統的に大きく異なることが示された。各系統において、下位の遺伝的構造は不明瞭であり、地理分布との対応も認められなかった。特筆すべき結果として、台湾の街路樹や四国の生産圃場では他系統からの移入個体が確認され、複数の集団で遺伝的混合の可能性も示唆された。以上より、(1)「日本」と「中国・台湾」のクスノキは独立した保全単位とすべきこと、(2)人間活動によって系統間の遺伝子移入が生じていること、が明らかとなった。遺伝子移入の頻度や影響については更に調査が必要だが、クスノキの需要は特に中国国内で急増しており、適切な利用が求められる。


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