| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-268 (Poster presentation)

日本の河川における魚類群集と攪乱レジームとの関係性

*川西亮太(北大院・地球環境), 吉村研人, 渡辺裕也, 三宅洋, 井上幹生(愛媛大院・理工), 赤坂卓美(帯広畜大)

流量変動(流況)は河川生態系の攪乱レジームを規定する主要因であり、5つの要素(規模、頻度、持続時間、タイミング、変化率)により特徴づけられる。流況が河川生物の分布に影響しうることは広く認識されているが、5つの要素のいずれが重要であるのかは理解が進んでいない。本研究では国土交通省河川水辺の国勢調査の魚類データと日本全国の河川流量観測所の流量データのマッチングにより、魚類群集と流況特性との関係性を明らかにすることを目的とした。まず、生物地理的要因による種数の地域差を考慮するため、在来種の在・不在データを基に109水系のクラスター分析を行い、4つの地域(北海道、東日本、西日本、環有明海)に分類した。この内、地点数が豊富な東日本(94地点)と西日本(136地点)それぞれにおいて、全種、在来種、国内移入種、国外移入種の各種数およびこれらと生態特性(表中層、底生)、生活史特性(回遊性、流水性、氾濫原・止水性)、産卵様式(礫下産卵、水草産卵など)の組み合わせを目的変数とし、回帰木分析を行った。説明変数には、標高、流域面積、緯度、経度に加え、122の流況指標を要素ごとに2-3軸へ主成分化した11変数を用いた。その結果、複数の回帰木で流況変数が有意な説明変数として選択された。特に、全種数や在来回遊魚種数の回帰木では両地域で流況変数が含まれた。概して、規模や持続時間、変化率を表す流況変数が選ばれる傾向にあり、例えば東日本の国外移入種数は春季の出水規模が小さく、流量の変化率が安定した地点ほど多かった。これらの結果は、流況を要素ごとに評価することが、在来魚類だけでなく、移入種の分布パターンを理解する上でも重要であることを示唆している。


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