| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-289 (Poster presentation)

イモゾウムシ個体数密度の寄主植物による違い−ベイズ統計モデリングによる解析−

*本間 淳(琉球産経・沖縄県防技センター), 高倉耕一(滋賀県大・環境)

不妊虫放飼法(SIT)は農業・衛生害虫に対する広域的防除における有効な手段として世界中で利用されてきた。SITの成否は野外に生息する害虫(野生虫)に対して十分な数の不妊虫を放飼できるかに大きく依存するため、事前に野生虫の生息密度を正確に把握することは非常に重要である。さらに、個体数の季節変動や寄主植物間・生息場所間での違いや移動スケールなどを明らかにすることで、より効果的な根絶計画を作成することが可能となる。沖縄県ではイモゾウムシ(Euscepes postfasciatus)のSITによる根絶事業を行っており、久米島では寄主植物3種(サツマイモ・ノアサガオ・グンバイヒルガオ)へのイモゾウ寄生を長期にわたってモニタリングしてきた。調査対象地域は全島にわたるが、毎回の調査は島の東西で各20カ所を適当に選んで行っており、調査間隔も寄主植物の種類によって異なる(イモは3ヶ月に一回、ノアサ・グンバイは毎月一回)。そこで、我々は地域メッシュ(1km2、500m2)を利用して島全体を区分けし、各メッシュにおける寄主植物1mあたりの平均個体数とそれに影響を与える要因(寄主植物・季節・場所)の推定を、空間構造を組み込んだ状態空間モデルを用いて行った。その結果、推定平均個体数は寄主植物によって大きく異なった。年変動は寄主植物間でそれほど変わらなかったのに対し、季節(月)変動は寄主植物によって全く異なるパターンを示すことが分かった。また、場所(メッシュ)ごとの推定個体数も大きく異なったが、季節を通して推定個体数の多い場所と少ない場所があった。以上の結果は、イモゾウムシは移動距離が小さい上に寄主植物間での移動もあまりないことを示唆している。


日本生態学会