| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-294 (Poster presentation)

琵琶湖産スジエビの体組成の季節変化と季節移動の関連について

鄔 倩倩,*石川 俊之

琵琶湖に生息するスジエビは、春から夏にかけて沿岸域で繁殖し、秋から冬に深い水深に移動し、また春に沿岸に戻るという深浅移動を行う。この深浅移動を示す生態学的理由について十分検討されていなかった。

本研究では、この深浅移動の理由は積極的に餌を求めて移動するのではないかと考え、栄養状態を示す指標や安定同位体比を用いて検討を行った。

研究には、琵琶湖の北端に位置する塩津湾で漁獲されたスジエビを用いた。スジエビは2014年から2015年にかけて計6回、底引き網(11月水深40m、1月水深60m、4月水深60m)もしくはたつべ漁(5月水深15m、7.8.9月水深7m)で漁獲した。

栄養状態を示す指標は、RNA/DNA量比(吸光度による測定)、脂質含有量(重量法)を分析した。餌起源の推定には炭素・窒素安定同位体比(質量分析計)を測定した。

分析の結果、RNA/DNA量比、脂質含有量ともに、秋から冬にかけての低下はみられず、むしろ増加している結果が得られ、深底部で十分餌が得られていることが示された。

炭素安定同位体比は、11月から1月にかけて低下(δ13C:約-23‰)がみられ、4月や5月まで同様の値を示した。岸に戻ってきた7~8月はこれに対して高い値(δ13C:約-21‰)を示した。この変化は、餌起源が沿岸帯と沖帯との間で変化したものを示すと考えられる。

窒素安定同位体比はδ15Nが11.0‰から13.5‰の間にあり、植物もしくは植物由来のデトリタスを利用しているか、もしくはそれらを利用した動物を摂食していると考えられた。δ15N が13.5‰を示したのは、深底部に分布する1月のサイズが大きな個体であり、既存の研究データを照らし合わせると、この時期にアナンデールヨコエビを摂食している可能性が示唆される。


日本生態学会