| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-385 (Poster presentation)

海洋島における野生化ヤギによる攪乱に伴う土壌流出が植物群集に及ぼす影響

畑 憲治(首都大)・大澤剛士(農環研)・平舘俊太郎(農環研)・可知直毅(首都大)

海洋島では野生化した外来哺乳動物であるヤギ(以下ノヤギ)による攪乱によって植生退行と表層土壌の露出が起きている。露出した表層土壌は、地形に沿って流出もしくは流入する。その結果、土壌の化学特性の改変が起こる。このような攪乱に伴う土壌改変は、ノヤギ駆除後に成立する植物群集の種構成に影響を及ぼす可能性がある。本発表では、ノヤギの攪乱の結果、土壌流出が起きた草地生態系において、ノヤギ駆除後の土壌の流出と流入、土壌の化学特性、植物種の出現・植物群集の種構成との関係を明らかする。

小笠原諸島媒島において、2014年に海側から内陸部にかけて200mのトランセクトを10か所設置した。各トランセクトで20mおきの地点における植物種の出現の有無を記録し、土壌の露出面積を測定した。サンプリングした土壌の有効態リン酸量、置換酸度を測定した。また、土壌の流出入量を評価するために1年間の土壌表面の位置の変化を測定した。さらに、地形を評価するために各地点の累積流量を計算した。

累積流量と裸地面積との間には負の関係が見られた。これは、土壌が流出しやすい場所ほど裸地面積が大きいことを意味する。土壌の流出入量のばらつきは、累積流量と裸地面積の交互作用によって説明できた。土壌の置換酸度と有効態リン酸量は、裸地面積とそれぞれ正と負の関係が見られた。土壌の流入が起きている場所ほど土壌の有効態リン酸量の値は低かった。主要な植物種の出現は、土壌の置換酸度が低い場所に偏った。土壌の有効態リン酸量と植物種の出現との関係は、種によって異なった。

以上の結果は、地形に沿った土壌の流出と流入は、土壌の化学特性を変化させ、結果的に植物種の出現パターンに影響を及ぼす可能性がある、ということを示唆した。


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