| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-414 (Poster presentation)

琵琶湖における外来魚オオクチバスの侵入が在来魚食魚ハスに与えた影響

*角田裕志(埼玉環境科学セ),大平充(農工大・農),浦野隆弘(元農工大・院・農)

ハス(Opsariichthys uncirostris uncirostris)は琵琶湖淀川水系に産する在来の肉食魚である。近年、琵琶湖の個体群は生息環境の悪化や外来魚の侵入によって個体数減少が懸念されている。本研究では、琵琶湖産ハスに対して外来肉食魚オオクチバス(Micropterus salmoides)の侵入が与えた影響を明らかにする目的で、1)現在の琵琶湖に生息する両種の食性比較、2)ハスの食性と成長についてオオクチバス侵入以前の先行研究との比較、をそれぞれ行った。2013年に採捕した個体の消化管内容物の分析と鱗を用いた齢査定から食性と成長を調べた。現在の琵琶湖に生息するハスはアユを中心に捕食する魚食性を示し、陸生昆虫を副次的に捕食していた。一方、オオクチバスはエビ類と魚類(アユおよびハゼ科魚類)を主に捕食していた。両種の食性には有意な重複が見られなかった。次に、ハスの食性に関する先行研究との比較の結果、現在の琵琶湖に生息するハスでは、かつて主要な餌となっていたコイ科魚類を全く捕食しておらず、ハゼ科魚類の捕食頻度・量ともに少なかった。また、ハスの成長に関する先行研究との比較では、雌雄とも1~2歳時の相対成長率が以前に比べて小さく、成魚期となる3歳以降で小型化している可能性が示唆された。本研究では、現在の琵琶湖においてハスとオオクチバスには餌資源を巡る直接的な競争は見られなかった。しかし、琵琶湖の湖岸環境の人為改変に加えて、オオクチバスの捕食影響によってコイ科魚類やハゼ科魚類などの餌資源が減耗したことによって、現在のハスの食性は過去と比べて大きく変化した可能性が考えられた。そして、このような食性変化がハスの成長の低下をもたらしたかもしれない。


日本生態学会