| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-433 (Poster presentation)

北極ツンドラ湿地生態系における生態系純生産量の推定

*内田雅己(極地研・総研大),廣田充(筑波大・生命環境系),岸本(莫)文紅(農環研),神田啓史(極地研),大浦典子(農環研),飯村康夫(滋賀県立大・環境科学),中坪孝之(広大院・生物圏)

北極陸域生態系は地球温暖化の影響を強く受けると予測され、かつ温度化に対して極めて脆弱だと考えられている。最終氷期以降、土壌中に蓄積されてきた有機炭素は温暖化によって分解が促進され、二酸化炭素の放出量増大を招き、生態系炭素収支を変化させることが懸念されている。湿原は、乾燥地と比較してより多くの有機炭素を蓄積することが解明されてきているものの、炭素循環に関する情報は著しく少ない。 

2012年以降、我々はノルウェー・スピッツベルゲン島ニーオルスン(79oN)付近の湿原であるコケツンドラにおいて炭素循環研究を展開している。このコケツンドラは、Sanionia spp., Campylium sp.やCalliergon richadsoniiなどのコケからなっており、Ranunclus hyperboreus, Cardamine nymaniiおよびSaxifraga caespitosa などの維管束植物が僅かに生育している。2013から2015年の夏期に、本調査地からコケおよびコケの堆積物を採取し、ニーオルスン基地に持ち帰ったのち、光合成活性および呼吸活性を通気法によって測定した。本発表では、コケツンドラの主要な生産者であるコケの光合成活性およびコケ堆積物の呼吸活性の測定結果を示すとともに、それらの結果から構築したプロセスベースのモデルを提示する。そして、2013年に現場で測定された二酸化炭素のフラックスデータと比較することで、モデルの精度を検証する。


日本生態学会