| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-450 (Poster presentation)

茶園土壌からのN2Oフラックスの季節変動とその要因の解析

*廣野祐平(農研機構),佐野智人,野中邦彦

茶園からの一酸化二窒素(N2O)発生量は、他の農地と比較して多いことが知られている。茶園からのN2O発生量削減のためには、その発生要因を明らかにする必要がある。本研究では、試験茶園で観測された土壌中の無機態窒素濃度等のデータからN2Oフラックスを予測し、N2Oの生成要因を明らかにすることを目指した。N2Oの生成経路として硝化および脱窒を考慮し、硝化および脱窒由来のN2O発生量の予測には、それぞれアンモニア態窒素(NH4-N)濃度および硝酸態窒素(NO3-N)濃度に比例する一次反応式が成り立つと仮定したモデルを用いた。反応速度定数の地温への依存性にはArrhenius式を、土壌水分量への依存性にはWalker式を用いた。反応速度定数や、地温・水分量に対する依存性に関する各パラメータの推定は、N2Oフラックスを目的関数とし、土壌中のNH4-N濃度、NO3-N濃度、地温、土壌水分量(体積含水率)を説明変数として、ベイズ推定法に基づくパラメータ推定法により行った。パラメータ推定はJAGS 4.0.0およびRを用いて行った。さらに、パラメータ推定を行ったデータとは異なる年次に、同じ試験茶園で行った4つの異なる施肥処理区における観測結果を用いて、推定したパラメータの妥当性を評価した。パラメータ推定の結果、本試験茶園からのN2O発生に関する硝化由来の反応速度定数の中央値は0.0062、脱窒由来の反応速度定数の中央値は0.0016と推定された。本調査データにおけるN2O発生量に対しては、硝化由来の発生量が大半を占め、総発生量に対して硝化の寄与が脱窒の寄与よりも大きいことが示唆された。異なる年次に同一試験茶園で調査された異なる施肥処理条件下でのN2O発生量を計算したところ、実測値をよく再現でき、推定されたパラメータの妥当性が確認された。


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