| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-465 (Poster presentation)

埋没腐植層の有機物は安定か?-土壌微生物の分解活性ポテンシャルから読み解く-

*早川智恵(東大院・農), 藤井一至(森林総研), 妹尾啓史(東大院・農)

北海道では有機物の厚く堆積した火山灰土壌が広く分布し、表層だけでなく下層の埋没腐植層にも多量の炭素が蓄積している。一般に微生物のバイオマス量・分解活性は土壌深と共に低下するが、有機物の多い埋没腐植層では微生物バイオマス量・分解活性が高く、埋没腐植の安定性に影響する可能性がある。本研究では14C-トレーサー試験により埋没腐植層の微生物相と有機物の分解活性ついて調べた。

北海道の森林・農耕地の表層および埋没腐植層から採取した土壌試料に14C標識グルコースを添加・培養し、14CO2の放出速度を測定した。基質濃度と14CO2放出速度の関係についてMichaelis-Menten式を用いて回帰し、最大無機化速度(VMAX)とミカエリス定数(KM)を求めた。土壌試料からEL-FAME法により脂肪酸メチルエステルを抽出・同定し、真菌比(糸状菌/バクテリア比)を求めた。また、微生物バイオマス炭素・窒素量および土壌の理化学性について調べた。

表層・埋没腐植層の全炭素濃度は0.6-13.1%だった。一方、全炭素量に占める微生物バイオマス炭素量の割合は、表層では0.6-1.3%であるのに対し埋没腐植層で0.1-0.5%であり、表層より埋没腐植層で低かった。VMAXKMはそれぞれ、303 -18598 nmol g-1 h-1、198-1294 µMであり、埋没腐植層では高い全炭素濃度にかかわらず低い値を示した。VMAXKMは土地利用によらず微生物バイオマス炭素・窒素量と有意な相関を示した。真菌比は表層より埋没腐植層で高く、真菌比が高くなるほどKMは低くなる傾向を示した。糸状菌とバクテリアの基質利用効率や増殖速度の違いにより、埋没腐植層では微生物による分解特性が異なることが示唆された。


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