| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-472 (Poster presentation)

平成25年「博物館総合調査」に見る日本の自然史標本の現状とその研究・管理体制

大阪自然史博

近年、自然史標本を文化財同様に社会的な財産として位置づける議論がなされている(佐久間 2011, 2014; 西田 2015;馬渡 2015など)。しかし、日本にはいったいどれくらいの自然史標本があるのか。そしてどのように管理されているのか。文部科学省の「平成23年 社会教育調査」には、登録博物館、博物館相当施設、類似施設に動物、植物、地学標本合計39,316,764点が保管されているという。これは人文系の実物資料と標本資料の合計89,515,644点の半数弱ではあるが大きな数字である。

また、上記の数値は大学や国公立試験研究機関の所蔵標本を含んでいない。1981年に刊行された「自然史関係大学所蔵標本総覧」には自然史関係標本27,713,856点が計上されている(神戸1984)。この数には大学博物館所蔵など一部は上記調査と重複するもの、研究室の再編や担当者の退官に伴い廃棄されたもの、他施設に移管されたものなども含まれるが、日本の自然史標本保存機関として、博物館、大学、そして国公立試験研究機関のいずれもが重要であることが示される。

これだけ膨大な資料ではあるが、文化財保護法の対象でなく、また博物館法でも資料の保全は担保されていない。公的な支援、指導、相互連携の体制や制度がないなど、歴史・美術資料に比べ脆弱である。大学の資料には何らの保護法制も費用負担を裏付ける施策もない。

「平成25年 日本の博物館総合調査」や分類学会連合「国内重要コレクション調査(植物)」、馬場・平島(1991, 2000)などを元に推定すると、国内自然史標本のおよそ半数が公立博物館などに、3割程度が大学に、残りが独法機関に所蔵されていると思われる。これらの資料は分類学上の価値だけでなく国土の生態系変化を記録する証拠であり、将来の研究資源でも学習素材でもある。各主体の連携した保全施策が必要である。

著者:佐久間大輔


日本生態学会