| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-013 (Poster presentation)

変形菌の研究 変形体の「自他」を見分ける力

増井 真那 (東京都立小石川中等教育学校)

5歳の時から変形菌の変形体の採集、複数種の長期培養と継代培養、実験と研究に取り組んでいる。2008年からは変形体が他の個体と出合う時の反応に注目し、これまでに3つの結論を得た。第1に、変形体には自他を見分ける力がある。別種は避け合い、同種は融合できるが、同種産地違では避け合う場合、融合できない組み合わせも存在した。このことから、変形体は自他を見分ける力を持つと結論した。第2に、この判断には変形体を包む粘液鞘が関係している。粘液鞘単体と個体を出合わせると、個体どうしの場合の反応と一致したことから、変形体は粘液鞘を自他の判断対象としていると結論した。第3に、この判断の仕組みは「融合できるかどうか」とは別の仕組みである。原形質の融合と粘液鞘での回避行動が同時並行で起こるという実験結果から、粘液鞘は変形体が外界(非自己)を判断する場であり、体内での原形質融合とは別の仕組みであると結論した。粘液鞘は体の保護、移動手段であるだけでなく、外界との関係を決めるカギであり、変形体はこれを使った判断と行動で自己を変えていく「動的な自己 dynamic self」を持つと考えている。


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